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目 次 |
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1.Tether(テザー)とは? |
2.テザー発行条件 |
3.避難通貨 |
4.海外ドル送金 |
5.そもそもなぜ価格を固定できるのか? |
6.ニューヨーク司法当局の調査記録 |
7.テザー裁判の結果(2019年7月30日) |
Tether Limited社(以下テザー社)から発行されている通貨で単位はUSDT、 価格がドルに連動するように固定されており(ペッグ通貨)発行上限がないのが特徴です。
「1USD≒1USDT」
次の条件で新規発行されます。
ユーザーからドルの入金があった場合にテザーは新規発行されます。 あるユーザーからテザー社に1,000USD入金されると、1,000USDTが発行され、 その1,000USDTが市場に流通する仕組みになっています。
なんか特殊っぽい感じがしますよね。 いったいどのような用途で利用されるのでしょうか。
下落基調の時や保有通貨の大幅なシステムアップデート など価格に大きな変動が起こる可能性がある場合、 価格がドルに固定されているため一旦テザーに逃がすことで資産の減少や予期せぬトラブルに巻き込まれ難くなります。
とりあえずテザーに逃がして様子を見るかという感じですかね。
ここで1つの疑問。
普通に法定通貨に逃がしても同じ事では?
仮想通貨市場は様々な国の人々が参入しており法定通貨も様々です。 仮に日本人が海外の取引所を利用している場合、法廷通貨は「円」であり、 円に交換するためには、海外取引所で日本の取引所で取り扱っている通貨に交換し、 その通貨を日本の取引所に送金、そして「円」に交換します。
この手順を踏むといくつもの手数料が発生してしまうため手数料がかからないテザーへの交換は、 逃がしておくだけなら非常に便利な存在なのです。
テザーはブロックチェーンを利用した仮想通貨なので、 銀行から送金するよりも圧倒的に手数料が安く送金スピードが早いです。
円やドル入金ができない取引所でも簡単に送金して通貨を購入する事ができるため 便利な存在となります。 ここでまたまた疑問。
他の仮想通貨でも手数料もスピードも早いのでは?
他の仮想通貨の場合、価格の変動がテザーよりも激しいため、 相手に着金する間に価値が変動している可能性があります。
割と価格が安定しているリップル(XRP)でも現時点ではある程度価格が 動いてしまうのでこのような事からもテザーは良く利用されます。
ここまでで、大まかなテザーの特徴や用途はお分かりいただけましたか? 次は少し深掘っていきます。
仕組みは至ってシンプルです。 テザー社は市場に流通している枚数分だけドルを持っている事になっています(な、なっている?)。 同額のドルを保有していればそれが担保となって価値を保全する事ができるのです。
どういう事かというと、テザーを保有しているユーザーが「ドルに戻してよ」と言ってきた場合、 交換対応できれば良いという事です。 極論、全ユーザーが交換要望を出す可能性があるので全ユーザーに対してこのような対応がとれる。
すなわち・・・
「テザーの総発行枚数分だけドルを保有する」
このような図式で成り立っているのですが、 ふとした事からあるユーザーが言いました。
「本当にお金持ってるの?」
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「テザー疑惑」
一度に数億枚のテザーが発行されるという事が過去に何度かあったのです。 テザーはドルでの入金があって初めて発行される仕組みなので「いったい誰がこんなに買っているのか?」 疑う人たちが現れたのです。
実はテザー社が勝手に発行しているだけじゃないのか?
仮にこれが許されてしまうと、いくらでもドルと同額の通貨を発行する事ができてしまうため、 ビットコインの価格を押し上げたり暴落させたりする事が出来てしまうのです。
価格操作です。
しかしテザー社は取引所ではないためビットコインの売買などは行っていません。 かといって大金を見ず知らずの取引所に送金し続けると当然怪しまれるため隠蔽する共犯者が必要になります。
世界最大手の仮想通貨取引所「Bitfinex」の存在。
Bitfinexに大量のテザーが送金された際、高額のレバレッジ取引が行われていた記録が 多々ある事からBitfinexにも疑いの目が向けられていました。
しかも・・・
・テザー社のCEO「ジャン・リュードヴァイカス・ヴァン・デァ・ヴェルデ」氏
・BitfinexのCEO「ジャン・リュードヴァイカス・ヴァン・デァ・ヴェルデ」氏
そう、まさかのCEOが同一人物なのです。
こうなってくると当然のごとく調査対象となり、実際に 米商品先物取引委員会(CFTC)からも呼び出しをくらったりしていたのですが、 なぜか黒という判断はされずスルーし続けていたのです。
なぜ浮き彫りにならないのか?
開かずの扉の鍵は開いたのに誰も開けようとしない。 まさにそのような状況でした。
そのような状況から一変、2018年秋に米連邦検察局によって仮想通貨市場に関する捜査が行われ、 当然、テザー社とBitfinexは重要な捜査対象となったのです。
ここで本格的にメスが入ります。
結果から言うと、テザー社は全顧客の入金額の70%強しか保有していませんでした。
そして、Bitfinex側も8億ドル以上の資産の損失をテザー社の準備金から補填していた事も 発覚しています。
テザー社とBitfinexが倒産すると、仮想通貨市場に激震が走ることは間違いなく 世界規模の大事件になりかねません。 ニューヨーク司法当局の調査によると、 テザー社とBitfinexの各担当者の間で次のようなメールのやり取りが 行われていたと発表しています。
この調査記録の中には、Bitfinex、テザー社の各担当者のやり取りも記録されており、 その一部を抜粋したのが次の通りです。
「ユーザーからの出金依頼が止まらない!」
「このままだとビットコインが1,000ドルまで落ちてしまう!」
「どうしよう(汗)(汗)(汗)」
「あ~もう、やるしかない!」
完全に「黒」です。
このような経緯もあって違法営業だと裁判にまで発展しました。
現在もこの件については裁判中ですが、 テザー社とBitfinexは、ニューヨーク州に対して「ニューヨークで営業していないんだからお前達には関係ないだろ」 という言い分で訴訟棄却を申請しています。
なぜこのタイミングでテザー疑惑の追及に踏み入ったのか? 今までも決定的な証拠をあげられるタイミングはあったように思えます。 さらなる闇があるのか私には分かりませんが、まだまだ続くのは間違いなさそうですね。 今後の展開に注目です。
これまでの裁判の中で一番大事な論点は、ニューヨーク州で営業していたかどうかです。それによってBitfinex・テザー側の 「お前達には関係ないだろ」という言い分が通るため一旦は収束するのではないかと思われます。
そして、現在まで行われていた 「Bitfinex・テザー社」と「ニューヨーク司法当局」の裁判の結果が2019年7月30日(日本時間)に でたのでお知らせします。
結果は、Bitfinex側の棄却申請を却下せずにニューヨーク司法当局による「90日間の延長捜査」を行う事に なってこの期間、Bitfinex・テザー社は共に通常営業を行う事が可能となります。
まだまだ続くのか・・・
そんな気はしていましたが、やっぱり今回も白黒はっきりするまでにはいたりませんでした。
これは仮想通貨市場全体を左右する程の重要な裁判なので新しい情報が入り次第随時アップしていきたいと 思います。
閲覧ありがとうございました。