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目 次 |
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・ハッキング当時の状況 |
・組織再編 |
・カタパルトの実装 |
・カタパルトへの移行 |
こんにちは。 今回は、コインチェックから流出したことで一躍有名になったネム(XEM)の今について 解説したいと思います。
※ネムは通貨の名前ではなくプラットフォームの名前で、 ネムというプラットフォーム上で使用される仮想通貨がXEM(ゼム)です。
2018年1月26日、日本の仮想通貨取引所コインチェックから当時のレートでおよそ580億円相当の XEMがハッキングにより流出。
仮想通貨市場最大のハッキング事件となり「仮想通貨ヤバイんじゃね?」という 認識が世間にガッツリと植えつけられる要因になりました。
当時の状況はまだうっすらと覚えているのですが、 1月中旬から下旬にかけてリスク分散のために保有通貨を複数個所に送金していたんですね。
市場全体も下落傾向にあったので売ろうかホールドするか考えつつとりあえず移動しとこうと、 そしてまさにハッキング当日ですよ。
昼過ぎにコインチェックに保管していたXEMを別の場所へ 送金を試みるも出金できない!
この時点ではハッキングの発表はまだされていなかったと思うのですが、 直感でやられたと思いました・・・
だって今までこんなことなかったんですもん。
何の予告もなくXEM以外の通貨も出金停止になってるし、アプリの機能も制限されていくし、あのゲートが徐々にガッシャンガッシャン閉じられていく感じ、 もう嫌な予感しかないですよね・・・
そして、コインチェックの発表により保有しているXEMの流出が確定しました・・・
XEMは小額しか保有していなかったので、ショックはショックでしたけど それよりも「あ~本当に盗まれるんだ」という思いの方が強かったのを覚えています。
この時、ハッカーは追跡を困難にするために複数のアドレスへXEMを分散して捜査をかく乱します。
コインチェックはネム財団に協力を要請します。
協力はするが、最終手段であるロールバックはやらない方針を発表してユーザー激オコ。
ロールバックを実施すると中央集権的な処置になってしまい 今後のブロックチェーンの発展の妨げになってしまうことを懸念しての決定でした。
※ロールバックとは、生成されたブロックチェーンをハッキング前の状態まで巻き戻し、 ハッキングがなかったことにしてしまう方法です。有名なものとしては「The DAO 事件」で イーサリアムがロールバックしています。
追跡者は、モザイクをかけた通貨をハッカーが分散送金した 各ウォレットに送金します。
これによりハッカーのウォレットはマーキングされ、 このマーキングされたウォレットから送金されてきたXEMを交換しないよう各取引所に呼びかけます。
ちなみにマーキングは付けた本人しか外すことができません。
これよってハッカーが取引所でXEMを交換することが難しい状況になりますが、 そこでハッカーが思いついた方法が「自分で取引所を作る」でした。
闇の取引所で販売されたXEMは通常の市場価格より安かったので 結構な勢いで売れたみたいですね。
これ以外にも匿名通貨への交換など様々な手法を用いてハッカーはマネーロンダリング を試みます。
結果的にほぼ全てのXEMを売り抜けることに成功しています。
なぜ追跡は失敗したのか・・・?
国内の取引所では、免許証などの本人を証明するための情報を提出しなければならないため 簡単にアドレスから個人が紐づくのですが、海外だとそれがないところもあるので ピンポイントで特定するのは難しいようですね。
しかしながら、ピンポイントは難しくても大体の場所は特定できるので、 当時ネット上では捜査がやりにくい地域、簡単に手が出せないような相手・・・「北朝鮮じゃね?」 なんて噂が飛び交っていましたがあながち間違っていなかったようです。
セキュリティ専門Group-IBの調査報告書によるとハッカー集団「Lazarus(ラザルス)」によるものだと いうことがわかっていて、ラザルスを支援しているのは北朝鮮なのでまあ・・・そういうことなんでしょうね。
当時、ネム財団がとった行動が正しかったのかどうかはわかりませんが、 結果的に580億円の売り圧力によって価格が押さえつけられ、今はこんな感じになっちゃってます。
現在の時価総額は・・・
25位です。
悪くはないですが、バブル期は10位前後に位置していたこともあるのでそれを 考えると結構落ちていますよね。
そして、ハッキング後しばらくして・・・
2019年1月末に組織再編成を発表。
ネム財団倒産の噂からネムがなくなるのではないか?という 情報が出ていましたが、
そもそもネム財団の主な活動はネムを世界に広めるための広報活動であり、 開発は別の組織が行っているため「ネム財団倒産=ネム無くなる」ではありません。
代表のアレックス・ティンズマン氏は、倒産に関する報道に 猛反論していたようですが、経費削減などの見直しもするということから 運営がきつかったことは間違いないと思います。
運営・開発資金はXEMを市場で売却して調達するので、 価格が下落傾向にあるときは売り圧力になってしまうため売却しにくいものです。
2018年は市場全体が暴落して、さらにXEMはハッキングも重なっていますからね。
むしろ多くの通貨が開発中止になる中、よく耐えたほうだと思います。
組織再編により新たな出発を試みるネム財団ですが、一方開発の方はどうなっているのか?
ネムの開発と言えばあれしかありません。
ネムと言えば、カタパルトに尽きると言っても過言ではないでしょう。
カタパルトとは大型アップデートにより実装されるネムのコアエンジンのことを言います。
これまでカタパルトを実装するという情報が出ては延期されるということが 何度も繰り返されておりユーザー離れを引き起こす要因ともなっていました。
ですが、最近になりようやく見通しがたったようです。
カタパルトの実装によって得られる機能とは?
処理できるトランザクション数が大幅に引き上げられます。
これにより、様々な仮想通貨で問題になっているスケーラビリティ問題の 解消に期待できます。
※スケーラビリティに関しては過去の記事をご覧下さい。
→ イーサリアムのスケーラビリティ問題
複数のトランザクションを同時に処理するための機能で、 これによりさらに処理能力を向上させることができます。
セキュリティ強化に関するアップデートです。
マルチシグ(マルチシグネチャー)で管理されているアドレスは送金する際、複数の秘密鍵が必要になります。
これだけでもセキュリティは高いのですが、それをさらに多階層で行うというものです。
イメージとしては、形状の違う2つの鍵を用いて1個目の扉を開けた後、さらに鍵穴が違う別の玄関が あります。
2つ目の扉を開けてようやく処理を実行することができるという感じです。
2019年9月に入ってカタパルトの移行に関する情報が発表されました。
内容としては従来のブロックチェーンを残しつつ並行してカタパルト対応のブロックチェーンを同時稼動させるというもの。
※以降、従来のブロックチェーン:NIS1/カタパルト対応のブロックチェーン:NIS2
NIS1をカタパルト対応にアップデートすることが極めて難しく、 かと言ってNIS1を完全に切断してNIS2のみで稼動させることは ネムの嫌いな中央集権的な処置になってしまうため、2つのチェーンを並行して稼動させることが 最も適切だと判断したようです。
どうも今回はハードフォークのようなものではなさそうです。
ハードフォークとは、今まで1本チェーンだったものが仕様変更やコミュニティの対立によって 途中から2本に分岐することを意味しますが今回は互換性がない完全な別物のようです。
今までのXEM保有者はどうなるのか?
新通貨(※名前未定)が配布される可能性が一番高いのですが、 それは次の3通りの内、どの方法で移行するかで配布されるかどうかが決まるようです。
NIS2を開始すると同時にその時点のNIS1のXEM残高をコピーする方法です。
この方法だと、NIS1とNIS2のそれぞれに同枚数の通貨、XEMを10,000保有していたら NIS2にも10,000枚、2つのチェーンを合わせて20,000枚が資産となります。 しかし、この方法はセキュリティ上厳しいみたいです。ハードフォークの場合はこの方法が主流です。
この方法の場合、「交換」なので 保有しているXEMを渡して同枚数の新通貨を受け取ることができます。
このように大幅な仕様変更の場合、同枚数の通貨が配布されることで一見得したように 感じるのですがそれは配布される内容によるところが大きいものです。
内容によってはコミュニティが分裂によって単純に時価総額が二分化される可能性があります。 今回は、多くのユーザーが待ち望んでいるカタパルトの実装であり、 ほとんどは新通貨の交換に応じる可能性が高いので この二分化を防ぐという意味ではこの方法も悪くない選択肢の一つなのです。
この方法は、保有しているXEMを放棄することなく新通貨を受け取ることができます。 NIS2の開始前にウォレットからトランザクションを送ってオプトインします。 オプトインしたアカウントはNIS2の開始時に新通貨が配布される仕組みです。
要するにNIS2の移行に同意したユーザーには新通貨を与えますよということです。
現時点では(3)の方法で移行される可能性が高いみたいです。
ネムが今後どうなっていくのかは、 遅れている開発の巻き返しと組織再編でどれぐらいマーケティング力が 強化されたかによると思います。
自分もなんだかんだで気になっているので、今後も 新しい情報が出たら発信していこうと思います。
閲覧ありがとうございました。